離婚と年金分割

離婚に関する基礎知識

A.離婚の際に必ず決めなくてはいけないこと

未成年の子供の親権は必ず決めなければなりません。
養育費・面接交渉・慰謝料・財産分与などは法律上、離婚の必須条件ではないが、夫婦間に未成年の子がある場合には、親権者を定めないとその届出は受理されない。
子供のいない夫婦の場合には、離婚の合意のみで法律上は離婚が成立する。
その他の事項については離婚時に決めても決めなくても当事者の任意であり、離婚後に別途その取り決めをすることもできる。

B.兵糧攻めを回避する

経済的弱者が離婚交渉中に経済的困窮に陥らないよう、夫からの婚姻費用(生活費)の支払いが途絶えたら内容証明等でその請求をし、それでも任意に支払いをしないようであれば、迅速に婚姻費用(婚費)分担請求の家事調停を申し立てること。

C.離婚届不受理申出

相手方に知らぬ間に離婚届を出されないようにするための手続。
市区町村の戸籍係に「不受理申出書」を提出する。6ヶ月間有効。
必要であれば何度でも提出(延長)でき、不受理が不要となった場合は、届出人から「不受理申出取下書」を出す。

 

D.配偶者の暴力からの保護

配偶者から、生命または身体に危害を及ぼすような具体的暴力、またはこれに準ずる言葉の暴力などを受けている相談者に対しては、早急にシェルター(被害者を隔離し保護する施設)への保護や、裁判所に対し「保護命令」の申し立てをする必要がある。
保護命令は、被害者からの申し立てにより6ヶ月間の接近禁止や住宅からの2ヶ月間の退去を命ずるもので、これが発令された後の付きまとい等については、警察に応援を求める。内縁関係や元の配偶者からの暴力や付きまといもその対象となる。
DV防止法では、各都道府県が設置する施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにすることが法定されている。シェルターの所在は、加害者からコンタクトが取れないよう非公開である。

E.養育費と面接交渉は子供の権利でもある

離婚は夫婦だけの問題ではない。
離婚の際には、子どもへの配慮を忘れてはならない。
養育費と面接交渉は親の権利というだけではなく、子どもの権利であること、養育費の支払いと面接交渉はそれぞれ独立した法律的権利である。
当事者の多くは、この2つが引換給付のような誤解・錯覚をしているおり、この点については正確に理解しておく必要がある。
養育費は通常「成年に達する月まで」の支払いとするのが一般的であるが、高校卒業までとか、大学卒業まで、というような合意をすることもできる。

F.慰謝料・財産分与と解決金

【慰謝料】
相手方の不法行為に基づく損害賠償請求の一種である。即ち、相手方に不貞行為等の不法行為がない場合には、その請求の法的根拠がないこととなる。
離婚の際に、『互いに何らの債権債務を有しないことを確認する』という取り決め(いわゆる『清算条項』)がなければ、離婚後に請求をすることも可能。
但し、離婚のときから3年を経過すると請求権は消滅時効にかかる。

【財産分与】
婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産を、離婚の際に清算すること。
預貯金、不動産といった具体的財産以外に、将来の退職金や年金なども分与の対象となる。
平成19年4月からは、いわゆる「年金分割」制度が施行された。
離婚のときから2年を経過すると請求権は消滅する(除斥期間)。

【解決金】
慰謝料や財産分与以外にも、例えば離婚後の扶養目的やいわゆる手切れ金といったような趣旨で、金銭の交付をする約定がなされる場合がある。
この場合は「離婚に伴う解決金」という名目で支払うことが多い。
※除斥期間と時効の違い
除斥期間は催告や訴訟の提起などによる「中断」がなく、当事者が援用しなくても当然に権利が消滅する点で、時効と大きく異なる。

年金分割に関する基磋知識

年金改革関連法案では、2007年4月より、中高年で離婚をする女性に於ける老後の所得水準の保証を目的に、婚姻中に支払った厚生年金の受給権を離婚した際には夫婦間で分割できる制度ができました。

A.女性の老後を保証することが目的

年金改革関連法案では、2007年4月より、中高年で離婚をする女性に於ける老後の所得水準の保証を目的に、婚姻中に支払った厚生年金の受給権を離婚した際には夫婦間で分割できる制度ができました。

B.妻の取り分は自動的に半分

2008年4月までは、厚生年金の分割割合は当事者同士の合意、あるいは裁判により決められていたが、2008年4月以降に妻が専業主婦(国民年金の第三号被保険者)だった期間分の年金については、妻の取り分は自動的に2分の1と決まる。

右図のように、妻は婚姻中の「夫が納めた厚生年金」の半分を年金として受給できるようになる。

C.妻も働いていた場合

厚生年金の分割割合が半分というのは「妻が専業主婦」の場合ですが、妻も働いていた場合は夫婦二人が払った厚生年金を同等にします。つまり、夫と妻が払った厚生年金を合算して半分にし、妻はその差分をもらうことで同等にします。

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